文書作成日:2024/08/20
相続土地国庫帰属制度の利用状況

相続土地国庫帰属制度を利用して、相続した山林を引き取ってもらえますか?

Q
今月のご相談

 このたび、山林を相続しました。自身ではとても利用できず、売却を試みましたがなかなか売れずに困っています。知人に相談したところ、相続した不要な土地を国が引き取ってくれる「相続土地国庫帰属制度」が令和5年に創設されたことを知りました。私もこの制度を利用したいと思い調べたところ、要件に合致しているのではないかと感じ、申請したいと考えていますが、本当に引き取ってもらえるのでしょうか。この制度がどの程度活用されているのか、その状況についても教えてください。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続土地国庫帰属制度を利用することで、ご相談のような山林を引き取ってもらうことができます。しかし、山林は引き取り対象外の土地の要件に該当する場合がありますので、その点にはご注意ください。

A-2
詳細解説
1.相続土地国庫帰属制度とは

 「相続土地国庫帰属制度」は、相続または遺贈(以下、相続等)によって宅地や田畑、山林などの土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度であり、令和5年4月27日に開始されました。

 相続等により取得した土地であることのほか、建物が建っていない土地であることなど、一定の要件があります。また、申請の際の審査手数料、引き渡す際の負担金を納付する必要があります。
 この制度の運用状況については、法務省HP「相続土地国庫帰属制度の統計」にて公表されています。

2.相続土地国庫帰属制度の概況

 相続土地国庫帰属制度の運用状況の概況は、下記のとおりです。

[運用状況の概況](令和6年4月30日現在)

総数 田・畑
農用地
宅地 山林
森林
その他
申請件数 2,030 771 744 298 217
帰属件数 341 87 148 11 95
却下・不承認 20
取下げ件数 237
(差引件数) 1,432
  • 申請件数2,030件に対して、帰属された件数は341件(16.8%)。
  • 却下・不承認は20件、取下げ件数も含め、帰属されなかった件数は257件(12.7%)。
  • 差引件数の1,432件はまだ結果が出ておらず、審査中と想定される。(差引件数が申請件数に対して70%を超えており、現時点では実際に活用されているとまでは判断できない。)
  • 地目別の傾向
    @宅地は申請件数、帰属件数ともに多い。
    A田・畑の申請件数は一番多いが、宅地より帰属件数は少ない。
    B山林の申請件数は宅地及び田・畑より少なく、帰属件数は極めて少ない。

 山林の帰属件数が極めて少ない理由は、引き取り対象外の土地の要件である「境界が明らかでない土地」もしくは「一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地」に該当することが挙げられます。

 よって、ご相談の山林については、前記等に該当し、却下・不承認となる可能性が懸念されます。改めて制度の要件に合致するかを慎重にご確認いただき、その上で申請されることをお勧めします。

<参考>
 法務省HP
 「相続土地国庫帰属制度の統計
 「相続土地国庫帰属制度について

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