文書作成日:2020/06/20


 未登記建物の賃貸ビルを相続して今後の賃料を受領できるようにするためには、どの様な手続きが必要となりますか。




 未登記建物の賃貸ビルを相続しました。相続人である私が当該建物の所有者(賃貸人)であることを賃借人に対して証明し、今後の賃料を受領できるようにするためにはどの様な手続きが必要となるのでしょうか。




 相続人は、相続した未登記建物の表示登記(※1)を行った上で所有権保存登記(※2)を具備すれば、賃借人に対して賃貸人の地位を承継したことを主張(証明)できるようになります。また、これに関して賃借人の承諾は要りません。



1.所有権保存登記

 所有権保存登記が具備されていないうちは、賃借人にとって誰が所有者(賃貸人)であるかはっきりせず賃料の二重払いの危険等があるため、新所有者は賃借人の承諾のない限り、自己が賃貸人であることを賃借人に主張できませんが、所有権保存登記後は、誰が新所有者であるかを賃借人は明確に知り得ることができるため、新所有者は自己が賃貸人であることを賃借人に主張できるようになります。
 従って、不動産物権が移転したという事実の確実な証明としての所有権保存登記がなされることで、相続人は賃料を受領することができます。

2.賃借人の承諾

 一方、賃借人にとって賃貸借契約の主たる目的は、建物をこれまで通り使用収益することであり、賃料等の賃貸条件が変わらない限り所有者(賃貸人)が誰であるかによって賃貸借の目的を害されることがないため、賃貸人の地位の承継に関して賃借人の承諾は不要と解されています。
 ただし、実務上はトラブル防止等のため、賃借人に対して賃貸人の地位の承継を書面(振込支払にて口座番号が変更となる場合はその旨も記載)で通知することが慣行となっています。
 また、賃貸人の地位が承継される場合には、賃貸借契約に伴い前賃貸人に預託されていた敷金又は保証金の返還債務も新賃貸人に承継されることになります。

(※1)表示登記とは、不動産の物理的現況を明らかにするため、不動産登記簿の表題部になされる登記のことであり、不動産登記法では建物を新築もしくは未登記建物を取得した日から1ヶ月以内に申請するよう定められています。また、表示登記を行わない場合には10万円以下の過料に処せられる可能性があります。

(※2)所有権保存登記とは、所有権の登記のない不動産について、最初に行われる所有権の登記のことです。表示登記とは異なり、所有権保存登記をするか否かは所有者の任意となっています。

 なお、建物を新築・購入等する際、当該建物等を担保(抵当権設定)にして、金融機関から融資を受ける場合は、表示登記及び所有権保存登記を行う必要があります。一方、自己資金により建物を新築・購入等する場合は、当該建物の登記を行わなくても問題ないとの誤った認識が巷で蔓延り、費用削減等の目的で表示登記がなされていない未登記建物が散見されますが、抵当権設定の有無に関係なく、表示登記は行う必要があります。ご注意ください。


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。