老朽化する賃貸マンションは相続開始する前に処分すべきでしょうか。
私が所有している賃貸マンションは、私の親が相続対策として建築し、私が引き継いだものです。最寄りの駅から徒歩5分と立地は良いのですが、築45年が経過しており、周辺の賃貸マンションに比べ見劣りします。そのため、近年は、周辺の賃貸マンションに比べ賃料を低くすることで、貸室の稼働率を上げてきました。子供からは、管理ができないので相続発生前に売却してほしい、と言われていますが、売却すると子供が負担する相続税が増えるのではないかと悩んでいます。
まずは、賃貸マンションの相続税評価額と、市場価格について比較検討することをお勧めします。
賃貸マンションのおおよその相続税評価額は、路線価(又は評価倍率)と固定資産税評価額で算出できます。
路線価や評価倍率は、毎年、国税庁から公表されています。また、固定資産税評価額は、毎年、固定資産税の納税者に届く納税書類に記載されています。
ここでは路線価が付されている土地を前提に、計算式や計算例を確認していきましょう。
なお、分かりやすくするために、土地の価額を計算するにあたっては、補正率等は一切考慮していません。
土地の価額:(路線価×土地の面積)×(1−借地権割合×借家権割合)
建物の価額:建物の固定資産税評価額×(1−借家権割合)
@土地の価額:
A建物の価額:
賃貸マンションの相続税評価額:@+A=162,500,000円
相続税評価額に対し、賃貸マンションのような収益不動産の市場価格は、収益還元法で計算することがベースになります。収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すと期待される収益(収入)をベースとして収益不動産の市場価格を求める手法のことですが、今回は、表面利回り(収入÷投資家の期待利回り)を利用して計算します。
賃貸マンションの年収÷投資家の期待利回り
賃貸マンションの市場価格:12,000,000円÷10%=120,000,000円
上記例では、賃貸マンションの市場価格(120,000,000円)より、賃貸マンションの相続税評価額(162,500,000円)の方が高くなります。そのため、相続発生前に賃貸マンションを売却した方が、支払う相続税の負担は少なくて済みます。
ただし、実際に比較検討する際は、譲渡所得に関する税金やその他諸費用についても考慮する必要があります。ご注意ください。
新築時には相続対策として効果のあった賃貸マンションも、築年数の経過とともに、賃料収入が減少していくことが原因で、相続税評価額が市場価格を上回ることがあります。特に、駐車場の敷地を広くとっているなど、土地の面積に比べ建物を小さくした場合などは、このような現象が起きやすいと思います。
所有されている賃貸マンションについて、将来の相続に不安のある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。